本業に悪影響!副業で疲弊してしまう人の具体例

収入アップやスキル習得を目指して副業を始める人が増えています。しかし、意欲的に取り組むあまり心身の健康を損ない、かえって本業のパフォーマンスを低下させてしまうケースも少なくありません。
副業による疲弊は、単なる「忙しさ」だけでなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って引き起こされます。
睡眠時間を削って働き続ける典型パターン
副業で疲弊する人に共通して見られるのが、睡眠時間の大幅な削減です。本業が終わった後の夜間や早朝に副業の時間を確保しようとした結果、慢性的な睡眠不足に陥ります。
こうした状態が続くと、判断力や集中力が低下し、本業でのミスが増えるだけでなく、副業の作業効率も著しく悪化していきます。
深夜労働による生活リズムの崩壊
本業が終わった後、深夜22時から翌朝5時まで副業のアルバイトをするような働き方では、睡眠時間が3~4時間程度しか確保できません。
週に数日とはいえ、このような極端に短い睡眠を繰り返すと、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、慢性的な倦怠感に悩まされたりするようになります。
さらに、睡眠負債が蓄積されることで、休日に長時間眠っても疲労が十分に回復しなくなるという悪循環に陥るのです。
業務時間中の居眠りと生産性の低下
副業による睡眠不足は、本業の勤務時間中に居眠りをしてしまうという深刻な事態を招きます。
会議中やデスクワーク中に眠気に襲われ、本来のパフォーマンスを発揮できなくなるだけでなく、職場での評価にも悪影響を及ぼしかねません。睡眠時間が6時間未満になると、事故やヒューマンエラーの頻度も高まるため、業務上のリスクも増大します。
| 睡眠時間 | 本業への影響 | 副業への影響 |
|---|---|---|
| 3~4時間 | 判断力の著しい低下、居眠り、ミスの頻発 | 作業効率の大幅な悪化、品質の低下 |
| 5~6時間 | 集中力の低下、疲労感の蓄積 | 創造性の減退、モチベーションの低下 |
| 7時間以上 | 通常のパフォーマンス維持 | 安定した作業品質 |
睡眠不足の影響は本人が自覚しにくいという特徴があります。「なんとなく調子が悪い」と感じながらも、原因が睡眠不足だと気づかないまま非効率な作業を続けてしまい、結果として本業と副業の両方で成果を出せなくなってしまうのです。
休息時間がゼロになる過密スケジュール
副業に取り組む時間を確保するために、本来休息に充てるべき時間を削ってしまう人がいます。週末の両日とも副業のシフトに入れてしまったり、平日の夜も毎日副業をしたりすることで、心身をリフレッシュする機会が完全に失われてしまいます。
厚生労働省の副業・兼業に関するガイドラインでも、過労による健康被害を防ぐために適切な就業時間管理の重要性が指摘されています。
家族との時間を犠牲にする代償
休日を副業に充てることで、家族や友人と過ごす時間が大幅に減少します。こうした状態が続くと、人間関係にひずみが生じるだけでなく、精神的な支えを失うことで孤立感やストレスが増大していきます。
家族からの理解を得られないまま副業を続けることで、家庭内の雰囲気が悪化し、それがさらなる疲弊の原因となる場合もあります。
趣味や自己投資の時間が消失
副業に時間を取られすぎると、これまで楽しんでいた趣味や、自己成長のための学習時間が確保できなくなります。気分転換やストレス解消の手段を失うことで、心の余裕がなくなり、すべてが義務的に感じられるようになってしまいます。
その結果、副業自体も楽しめなくなり、「負担」としか感じられなくなるのです。
- 週末両日を副業に充てることで、完全な休息日がなくなる
- 平日の夜も毎日副業をすることで、リラックスする時間が消失する
- 家族や友人との交流が減り、人間関係が希薄化する
- 趣味や運動など、ストレス解消の手段を失う
- 自己投資や学習の時間が確保できず、長期的なキャリア形成に支障が出る
休息時間がゼロになると、短期的には作業時間が増えたように感じられますが、実際には疲労の蓄積によって作業効率が低下するため、結果的に生産性は大きく損なわれてしまいます。
過度なストレスと心身の健康悪化

副業と本業の両立によって、1か月あたりの総実労働時間が極端に長くなると、強い不安や悩み、ストレスを抱える人の割合が増加します。総実労働時間が360時間以上になると、約7割の人が強いストレスを感じているというデータもあります(厚生労働省:過労死防止資料より)。
こうした長時間労働は、精神的な負担だけでなく、身体的な健康問題も引き起こします。
免疫力低下による体調不良の頻発
慢性的な疲労状態が続くと、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったり、原因不明の体調不良に悩まされたりするようになります。頭痛、めまい、胃腸の不調など、さまざまな症状が現れ、それがさらに仕事のパフォーマンスを低下させる要因となります。
体調不良で欠勤や遅刻が増えれば、本業での評価にも悪影響を及ぼしかねません。
メンタルヘルスの悪化
長時間労働によるストレスは、うつ症状や不安障害などのメンタルヘルス問題を引き起こすリスクを高めます。
「収入が低い」という悩みを抱えながら長時間働き続けることで、精神的に追い詰められていく人も少なくありません。気分の落ち込みが続いたり、何事にも興味が持てなくなったりした場合は、早めに専門家に相談することが大切です。
過労死のリスクも視野に
週の労働時間が60時間を超えると、脳・心臓疾患のリスクが高まることが知られています。副業を含めた総労働時間を把握せずに働き続けることは、過労死につながる危険性さえあります。
労働基準法では事業主を異にする場合でも労働時間を通算することが定められており、労働者自身も自分の総労働時間を正確に把握し、健康管理を行う必要があります。
| 健康被害の種類 | 主な症状 |
|---|---|
| 身体的疲労 | 慢性的な倦怠感、頭痛、めまい、胃腸障害、腰痛 |
| 免疫力低下 | 風邪をひきやすい、感染症にかかりやすい、回復が遅い |
| 精神的負担 | 抑うつ気分、不安感、イライラ、集中力低下、意欲減退 |
| 重大疾患 | 脳・心臓疾患、過労死、精神障害 |
副業による疲弊を防ぐためには、副業に充てる時間を週2~3日程度に抑えることや、必ず休息日を設けること、睡眠時間を最優先で確保することが重要です。収入を増やすことは大切ですが、健康という最大の資産を失っては本末転倒になってしまいます。
自分の体調の変化に敏感になり、無理のない範囲で副業に取り組むことが、長期的に見て最も賢明な選択といえるでしょう。